ピークアウトとは?
最近は新型コロナウイルスのニュースでよく目にするこの言葉です。
疫病の推移に使われたり、金融機関でも使われる言葉です。
頂点に達し、それ以上は上がらない状態のこと。同時にそこから先は下落や衰退に転じること。(野村證券HPより引用:https://www.nomura.co.jp/terms/japan/hi/A03113.html)
意味はこの通りです。
これは競技スポーツの世界でも同じことが言えます。
ピーキングという言葉を聞いたことがあると思います。
大事な試合に向けて最高のパフォーマンスを発揮するためにプログラムを組んでいくことを指します。
じゃあピーキングをするために何をしなければならないのか?
そもそも競技のピークってなんや?
筋力値が1番高いところか?
そんな簡単なものではありません。(もちろん構築される要素ではありますよ!)
例えば球技系種目で言えば競技パフォーマンスを考えるとどのような項目があるのか。
スキル、戦術、フィジカル、メンタル、疲労度…様々な要因が組み合わさりピーキングというものが出来上がりますが、競技スポーツにおいてはなかなか目に見えないものが多いため、本当に上手くいってるのか判断しづらいのが現実です。
私の職域ではフィジカルを担当するのでシーズン最初に何をピークとして設定するのかをはっきりしなければなりません。
その上で、どの時期にどうなって最終的にどうなるといったストーリーを考えた上でプログラムデザインする必要があります。
1番大事な試合にピークを持ってくるとなるとそこが競技パフォーマンスの頂点なわけです。
それよりまだ上が目指せそう!!となるのはピーキングに失敗している証拠です。
パワーリフティングやウエイトリフティングでも同様で、最近ジャパンクラシックや全日本ベンチといったビッグイベントを終えたばかりのベンチプレッサーでピークアウトに悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
実際にその相談を受けて今回の記事を書くことに決めました。
ピークアウトを気にする必要は全くありません。
むしろそれは試合に向けたピーキングがしっかり出来上がっていたとご自身を褒め讃えましょう!!!
私はそう考えています。
S&Cコーチ目線からピークアウトの脱出方法について提案したいと思います。
ピリオダイゼーション
ピリオダイゼーションという言葉をご存知でしょうか?
ピリオダイゼーションとはシーズンを数ブロックのサイクルに分け、ある時期に競技パフォーマンスのピークを設定し、それに向けてそれぞれのサイクルで目的に合わせたプログラムを実行していき、ピークに持っていく考え方です。
私がS&Cコーチとしてプランニングをする際最も時間をかけて構築していくもので、最も得意とする分野です✨
ピリオダイゼーションには大きく3つのサイクルが存在します。
マクロサイクル
マクロサイクルというのは1番の大枠です。
最も長いサイクルのことで、通常のシーズンスポーツだと1年で設定されます。
オリンピックスポーツだと4年間で設定されるオリンピックサイクルと呼ばれるかなり長期間のサイクルも存在します。
ピーキングをどの試合に設定するかでこのサイクルの長さが変わります。
メゾサイクル
数週間、数ヶ月単位で設定されます。
そのトレーニングの目的に合わせたサイクルのことです。
筋肉のことだけでいうと、筋肥大期、筋力期、パワー期といった期分けをいいます。
その目標を達成するためにある程度のトレーニング期間を要さなければならず、それを獲得するための中期間のサイクルと考えていただければ結構かと思います。
ミクロサイクル
通常1週間でサイクルが組まれます。
週内にはセッションという更に細かい分け方がありますが、7日間の中でセッションがいくつかあり、それの集まりがミクロサイクルです。
ちなみに私はミクロサイクルを4週集めて1メゾサイクルを形成しています。
なので基本4週間はセッションの内容を変えません。
なぜなら、そのトレーニングの成果がわからなくなってしまうからです。
このようにサイクルによって期待するトレーニング効果を変化させ、最終的に目標としている試合でピークを迎えるためにピリオダイゼーションというものは組まれます。
正直これなしにトレーニングプログラムというものは作れないといっても過言ではないと思います。
もっと細かい設定など存在するのですが、ここでは書き切れないので質問してください。
さてパワーリフター・ベンチプレッサーの皆様、ピークアウト対策です
ピークアウトで重量が上がらないとお悩みの皆様、まず大事なのは積極的休養です!!
パワーリフターやベンチプレッサーのピークというものは他の競技スポーツと比べればはっきりと分かりやすいです。
要は1RMが最大値を示せば良いのです。
もちろん単純に筋を鍛えれば良い訳ではなく、可動域や筋力が変化したことによりフォームも徐々に変化します。
それを考え、微調整を繰り返し、更には過負荷を加え筋、神経を活性化させていきます。
ピーキングするために酷使したのは肉体だけでしょうか?
試合が近づくにつれ「なんで記録が伸びないんだろう?」「本当にこのフォームで上がるのか?」など考えに考え、メンタルに余裕がありましたか?
どれだけメンタルが強いという人でも確実に心も体も削られています。
中枢性疲労ハンパないです。
それがピーキングの難しさです。
最初に書きましたが、その中でピーキングに成功し最高のパフォーマンスを発揮した自分を褒め讃えるべきじゃないですか?
今は挙上重量など気にせず、身体も心もリフレッシュさせてあげたら良いのではないですか?
ガッツリ2週間くらいベンチプレスのこと考えなくても死にはしません。
これだけでは私が書く意味がなくなってしまうので、ここからは筋肉の話です。
パワーリフティングやベンチプレスというものはフォームうんぬんはもちろん超重要ですが、最終的にものをいうのは筋力です。
以前のブログにも書きましたが、筋力というのは筋の横断面積に比例します。
そしてデカくなった筋に対し、どれだけのモータユニットを動員させるかが筋力発揮のキーとなります。
例えばベンチプレスの主動筋である大胸筋に100のモーターユニットがあるとします。
150kg上げるのに100全て動員できたとして現状の大きさの大胸筋だと伸び代があると思いますか?
大胸筋全ての筋線維を動員してるということはその筋力が現時点の限界値です。
これがパワーやベンチプレスでいうピークアウトです。
だからいくらやっても伸びるわけがないのです。
後はベンチプレスに動員する筋を筋肥大させ、またその筋のモータユニットが限界値まで動員できるようにトレーニングするしか筋力を伸ばす方法がないのです。
そのためのピリオダイゼーションなのです。
競技に出たことのない私がいうのも烏滸がましいですが、S&Cコーチとして批判覚悟で言います。
パワーリフターやベンチプレッサーは練習も大事ですが、もっと筋トレすべきです。
今空前のフィットネスブームでフィジークやボディビルが流行っていますが、仮にあの筋肉量を持つ彼らが本気でこちらに参戦したら、3年で上位は入れ替わると思います。
なのでピークアウトを抜け出すためにはまず休む!
その後来年に向けた身体作り!!
あまりパワーやベンチプレッサーはやらないかもしれませんが、常にギリギリを狙った(RPE9〜10)筋肉をデカくするための筋トレ!!
ピークアウトできるくらいの凄い選手はデカくなった自身の筋のモーターユニットをフル動員させ、それに合わせたフォームを作ることは可能です。
一度休んでみる勇気を持って、今やっている競技を楽しんじゃいましょう♪
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