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オリンピックスタイルリフティングをS&Cトレーニングに組み込む

オリンピックスタイルリフティングとは

ウエイトリフティングのことです。

クイックリフトとも呼ばれます。

なんでこのような仰々しい名前で呼んでいるかというと、20代前半の時にウエイトリフティング関係者の誰かに怒られたんです。

「ウエイトリフティングは競技だ!君はトレーニングで競技をするのか!」

何言ってんねんこの人、ベンチプレスとかはどうなんねんくらいにしか思っていませんでしたが、それ以降はこう呼んでいました。

クリーン、スナッチ、ジャークの3つを軸に、開始位置やフィニッシュを変更した様々な種目が存在します。

※今回はジャークを除いた内容となっています。

なぜ多くのS&Cコーチはオリンピックスタイルリフティングを採用するのか

S&Cコーチとは、ストレングス&コンディショニングコーチの略称です。

レジスタンストレーニングを用いて身体面から選手の競技力を向上させるのが役割です。

そのトレーニングプログラムの中にオリンピックスタイルリフティング(以下OL)を採用している人は多いです。

確かにOLから得られる恩恵は非常に大きいと考えます。

理由はほとんどの競技スポーツの動作は高速であり、OLは高速でできるトレーニング種目だからです。

ゆっくりのしのし動いているスポーツなんて見たことありませんよね。

素早く動くためには何が必要か?

できる限り短い時間で地面に大きな力を加えることです。

なぜ地面に力を加える必要があるのか?

ニュートン力学を見てみましょう。

人間が移動するときは外力が加わらなければ止まったままです(第一法則・慣性の法則)。

この時の外力とは、地面を踏み力を加えることで、地面から同じ大きさで逆方向に受ける力のことです(第三法則・作用反作用の法則)。

また、その移動に伴う加速度は、地面反力の大きさに比例し力の方向に作用します(第二法則・ニュートンの運動方程式)。

この3つの法則を見れば地面に大きな力を加えなければならない理由が説明できますね。

できる限り短い時間ということですが、スポーツにはパワーという概念があります。

パワーとは「単位時間あたりの仕事量」=仕事率のことです。

仕事量というのは「力(N)×距離(m)=仕事(J)」を定量的に表す量のことです。

Nは筋力が向上することによって大きくなります。

アスリートが下肢を鍛えるのは地面に大きな力を加えるためですね!

そしてその大きくした力をいかに短い時間で発揮するか。これがパワーです。

 

例えばスクワットです。

150kgの重りを同じ距離挙上するのに1秒と3秒かかったとします。

どちらがパワーが大きいか?

1秒ですよね!

1秒の方が3秒より下肢が素早く伸展しバーベルが速く加速し垂直方向に上がっているのは容易に想像がつくと思います。

なのでパワーは力×速度という公式が当てはまります。

アスリートのウエイトトレーニングは常にこれを念頭に入れておかなければなりません。

いくら大きい力で地面を踏めても時間がかかっては素早い移動は不可能です。

長々と書いていますが本題に戻します。

OLは大きな質量を高速に動かすことが可能なトレーニングです。

ただ、クリーン&ジャーク、スナッチの2つを漠然にやっていればいいわけではありません。

その2つはあくまでも競技であり、バーの下に潜り込むなどといった高等テクニックが必要です。

正直アスリートのウエイトトレーニングにそこまで時間かけてる暇はありません。

だって本業ではありませんから。

「いかに簡単に習得でき、目的に沿っているか」これに尽きると思います。

私なりの使い分け方を書こうかと思います。

OLをどう使い分けるか

スタート位置、グリップ幅、挙上範囲で大きく分けています。

<スタート位置>

床(1st)、ハング(2nd)、ミッドサイ(MT)、セカンドプルポジション(3rd)と私は分けています。

3rdに近づけば近づくほど地面を踏む距離(時間)が短くなるので力積が小さくなる分、地面反力も小さいです。

しかし3rdはセカンドプルの位置から加速なしで一気に挙上する為、動作終了までの時間が短いことで動作の平均パワーに関してはあまり変わりません。

<グリップ幅>

これに関してはクリーンかスナッチかだけです。

アスリートに指導する際はスナッチは基本軽い負荷で重量よりも速度にフォーカスして実施します。

オーバーヘッドでのキャッチなので失敗した時のリスクが大きいからです。

スナッチの挙上重量を競うのはウエイトリフティング選手の役目ですから。

<挙上範囲>

プル、ハイプル、キャッチの3種類です。

プルはシュラッグまで、ハイプルはバーをみぞおちから胸あたりまで、キャッチは文字通りです。

キャッチは基本パワークリーン、パワースナッチと呼ばれる立位で実施します。

スクワットキャッチは競技のためのものであって、アスリートには必要ないと考えています。

これを組み合わせるだけでもかなりパターンが存在しますね。

ここでは1stパワークリーン、2ndスナッチ、MTクリーンハイプル、3rdクリーンプルを紹介したいと思います。

1stパワークリーン

床から立位でのキャッチまでのクリーンです。

この種目を実施する理由は床を押す時間が長くなるので力積が大きくなります。

強く踏み続けることで力積が大きくなりバーが垂直方向へ加速され、より高重量を扱え仕事量が大きくなります。

シーズン後の移行期を挟み、身体的準備期などのスキルトレーニングが少ないタイミングで入れることが多いです。

高重量を下から上まで挙げるわけですから仕事量が大きいこと、1stプルという床からバーを引き上げる動作で腰を痛めるリスクが高いことからです。

要は疲労の状況と上手く組み合わせていけばいいということです。

ありがちなエラー動作はお尻から先に上がることで上体が起きず3rdまで引ききれないことで、MTでバーをぶつけるような形でバーを振り回す動作です。

これが難しい…。

 

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2ndスナッチ

膝上から頭上でキャッチする種目です。

この種目も頭上までの種目なので移動距離が長くなることにより仕事量は大きくなりそうですが、前述した通り私がトレーニング指導で用いる場合は重量を軽くします。

重量が軽い分挙げるのは容易になります。

大事なのは負荷を上げ難しくすることではなく筋の収縮速度を上げ、床を踏む時間を短くすることです。

短く大きな力を出すことがアスリートの競技力向上へ繋がるからです。

速度特異性という観点から、高速度の筋の収縮力を上げるには高速のトレーニング種目を選ばなくてはなりません。

その種目としては最適ではないかと考えます。

ありがちなエラー動作は2ndから3rdまで床を押せずMTでバーを跳ね上げてしまい、バーが弧を描くような軌道になることです。

 

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MTクリーンハイプル

大腿部中腹から3rdまでの短い距離で加速しキャッチまではしない。

トリプルエクステンションはもちろんながら肩や腕の力もしっかりと使う必要がある種目です。

ハイプルは手首にリスクがある選手やキャッチが上手くない、というよりキャッチまでする必要のない場合に用います。

さらに言えば、アスリートがOLをする時にキャッチにまでこだわる時間は勿体無いと考えています。

確かにキャッチが上手くできることでキャッチ時の体幹部の保持力やスナッチでは肩甲帯の安定性は高まると思います。

しかしOLで大事なことは床を強く素早く踏むことです。

ほぼ同じだけの仕事量であるハイプルの方が使い勝手は正直いいのでは?と考えています。

ありがちなエラー動作ですが、ハイプルになるといきなり肩に頼ってしまいトリプルエクステンションができなくなる人が続出します。

 

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3rdクリーンプル

3rdで身体をしっかり起こし踏み込むだけでトリプルエクステンションができるようにします。

特にトリプルエクステンションが苦手な人はこの種目を反復することで改善しやすいです。

加速距離がゼロなので踏み込みのみが全てのエネルギーとなります。

移動距離もシュラッグする動作だけなので小さいですが、トリプルエクステンションがしっかりと習得できればかなり重たい重量を扱うことができるのでかなり大きなパワー発揮ができます。

何より身体が最初から起きているので動作の習得が容易です。

かなり使い勝手のいい種目だと考えています。

ありがちなエラー動作は踵で踏み込めず、つま先重心となり足関節メインの動作になったり、身体を起こせずバーが前に挙がってしまうことです。

 

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まとめ

OLは床を強く速く踏むことに特化しているので、アスリートの競技力向上にかなりいい影響を及ぼします。

動作習得が容易なものから困難なものまで様々存在するので、その人に何が必要で何を改善すればいいのかを頭に入れておけば種目のパターンは多く作れます。

結構クリーンやスナッチを完璧に習得されることに時間を注ぐ方はおられますが、指導される側から見てそれはどうなのか?

あくまでも競技のための補強と考え、その時々に合った動作パターンが選ばれるきっかけになればと思います!

 

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須山トレーナー

 

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